江戸時代に生まれた日本独自の鍼術|杉山和一と管鍼法のお話

杉山和一が管鍼法の着想を得たと伝わる江ノ島をイメージした水彩画。

「鍼は痛そう…」

鍼灸にそのようなイメージを持たれている方もいらっしゃると思います。

しかし、実際に施術を受けられた方からは、
「思ったより痛くなかった」
「ほとんど痛みを感じなかった」
とのお声をいただくことも少なくありません。


現在、日本の鍼灸院で広く用いられている、痛みの少ない刺鍼法。
その背景には、日本独自の技術「管鍼法(かんしんほう)」があります。

今回は、日本鍼灸の発展に大きな影響を与えた杉山和一と管鍼法についてご紹介します。

鍼灸は古代中国で生まれ、日本へ伝わってきたと言われています。

その後、日本の風土や文化の中で独自の発展を遂げ、現在の日本鍼灸へとつながっています。

その発展の過程で生まれた技術の一つが、今回ご紹介する「管鍼法」です。

江戸時代に活躍した杉山和一は、日本鍼灸史を語る上で欠かせない人物です。

幼少期より視覚に不自由がありましたが、鍼術の修練を重ね、多くの功績を残したことで知られています。

現在、日本で広く用いられている管鍼法は、杉山和一の名とともに語り継がれています。

管鍼法の誕生には興味深い逸話が残されています。

杉山和一は修行の過程で思うような成果が得られず、失意の中で江ノ島にこもり断食修行を行ったと言われています。

修行中に衰弱して倒れた際、手に触れた松葉の入った管状のものから、後の鍼管につながる着想を得たと伝えられています。

これが後に管鍼法へと発展し、日本鍼灸を代表する技術の一つとなりました。

管鍼法とは、鍼を細い管(鍼管)の中に通して刺入する刺鍼法です。

今では当たり前のように使用されている鍼管ですが、その考え方や技術は江戸時代から受け継がれています。

管を用いることで鍼を安定して操作しやすくなり、日本独自の繊細な刺鍼技術につながりました。

管鍼法で使用される金属製の鍼管と鍼

管鍼法には、

・刺鍼が安定する

・細い鍼を扱いやすい

・刺入時の痛みや刺激をやわらげる

といった特徴があります。

こうした工夫によって、繊細でやさしく、痛みの少ない刺激を特徴とする日本鍼灸の礎が築かれてきたのです。

鍼管を用いる管鍼法には、

「少しでも患者さんの負担を減らしたい」
「より良い治療を届けたい」

という先人たちの願いがあります。

患者さんを想う気持ちが新たな技術を生み、その想いが受け継がれることで、日本の鍼灸は発展してきました。


私自身も、その歴史の延長線上にいる一人の鍼灸師として、日々研鑽を重ねながら患者さんと向き合っていきたいと思います。


Lucioleはりきゅう院
宇佐美 敦士